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変化球聖書人物伝~アムノン
Author
mito
Date
2020-12-20 07:28
Views
2683
※この文章は、2020年11月の月報から転載したものです。
アムノンは、ダビデ家の王子で、サムエル記第二3章2節の記述によればダビデの長子だったので、本来ならばダビデのあとを継いで王になる、王位継承権第一位にある人物でした。しかし彼は、そのような立場にあるまじきことをしでかし、ついには腹違いの弟であるアブサロム王子に殺されました。
サムエル記第二の13章を読みましょう。アムノンはアブサロム同様腹違いの、妹タマルに激しい恋をしました。近親ゆえに禁断の恋です。しかし、この思いを遂げてやろうとした、まるで悪友のような存在の従兄弟のヨナダブにアムノンは悪知恵を吹き込まれ、仮病を使って(しかも事もあろうにダビデ王まで使って)タマルを自室に引き入れ、強引にタマルを辱めました。
このことからわかるのは、アムノンのいだいた恋心は、つまるところ、若い男がいだくゆがんだ肉欲、情欲に過ぎなかった、ということでした。事をやり遂げたアムノンは、それゆえにタマルへの興味をなくし、しかもこのように、恐らくは、イスラエルの王子としてきわめてふさわしくないことをした(Ⅱサムエル13:12のタマルのことばを参照)ことに対する自己嫌悪のゆえに、自分のしでかしたことをなきことにしようとばかりに、タマルを自室から追い出しました。それは、タマルという一人の女性を意のままにし、なお責任を取ろうとしなかった、あまりにひどい態度です。このような者はやはり、イスラエルの王位を継ぐ者としてふさわしくなかったのでした。
行き場をなくしたタマルのことは、アブサロムが引き受けました。これは血を分けた兄として果たすべき責任を果たした、ということでしょう。しかし、アブサロムはこんなことをしでかしたアムノンのことを無視しているうちに(22節)、やがてその憎悪がアムノン殺しへと結実しました。ダビデ王家は、大変な家庭の破壊を味わうこととなったのでした。
それはなぜであったか。ダビデはバテ・シェバの夫ウリヤを戦地で殺害させ、ひとつの家庭を破滅に追いやったからでした。そのことはサムエル記第二11章に書かれていますが、忠臣の戦争未亡人を王さまがめとったというこの上ない美談は、実は「主のみこころを損なった」ことであったという評価で、11章は締めくくられています。それがどのような意味を持つかは、続く12章の預言者ナタンとのやり取りのうちに明らかにされ、ダビデは、ナタンの語って聞かせた、貧しい人の子羊を奪った富者の話がまさか自分のことを指しているとも知らずに激怒し、「その男は……子羊を四倍にして償わなければならない」(6節)と、律法(出22:1)を用いて命令を下しましたが、なんということか、この律法によってダビデがさばかれました。ダビデは、ウリヤのいのちを奪った分、4人の子ども(王子)のいのちを失い、そのいのちを失ったひとりがアムノンであったのでした。
もうひとつ、この12章に引きつづき、13章のアムノンの話が出てくるのは象徴的です。姦淫の罪を犯したという父親の罪が子に伝わったということです。ダビデはアムノンのしでかした事態に激怒しましたが(21節)、アムノンのことなど言えた義理ではなかったはずです。王宮にバテ・シェバが召し入れられた経緯に、アムノンはおそらく気づいていたはずで(バテ・シェバの産んだ子どもの重病にダビデはとても悩まされ、王宮もそれに振り回された)、アムノンはダビデの好色に倣ったに過ぎなかったとも言えます。
ともかく、ダビデもアムノンも、取り返しのつかないことをした点では同じです。しかし、ダビデとアムノンには、決定的な違いがありました。ダビデは悔い改めましたが、アムノンには悔い改めた形跡がありません。ダビデはもちろん、その罪の刈り取りを、家庭の破壊、アブサロムのクーデターといった恐るべき懲らしめの形で神さまから科されましたが、最終的には、その歩みが神さまとひとつであったと評価されています(列王記第一15:5)。これはやはり、悔い改めの賜物というべきものでしょう。しかし、これに対してアムノンの死は、ほとんどさばきのような形です。
私たちは、バテ・シェバと通じたダビデの姿や、タマルを辱めたアムノンの姿に、よもや自分はこんなことはあるまい、と思っていないでしょうか? しかし、罪を犯すこと、その結果、時に取り返しのつかないことをしでかしてしまうという点では、私たちも彼らと五十歩百歩です。私たちは悔い改めるチャンスがまだ与えられているうちに、詩篇51篇のごとく、心からの悔い改めを神さまの御前にささげ、イエスさまの十字架のゆえに赦されているという確信のもと、神さまとの関係を築き直してまいりたいものです。
アムノンは、ダビデ家の王子で、サムエル記第二3章2節の記述によればダビデの長子だったので、本来ならばダビデのあとを継いで王になる、王位継承権第一位にある人物でした。しかし彼は、そのような立場にあるまじきことをしでかし、ついには腹違いの弟であるアブサロム王子に殺されました。
サムエル記第二の13章を読みましょう。アムノンはアブサロム同様腹違いの、妹タマルに激しい恋をしました。近親ゆえに禁断の恋です。しかし、この思いを遂げてやろうとした、まるで悪友のような存在の従兄弟のヨナダブにアムノンは悪知恵を吹き込まれ、仮病を使って(しかも事もあろうにダビデ王まで使って)タマルを自室に引き入れ、強引にタマルを辱めました。
このことからわかるのは、アムノンのいだいた恋心は、つまるところ、若い男がいだくゆがんだ肉欲、情欲に過ぎなかった、ということでした。事をやり遂げたアムノンは、それゆえにタマルへの興味をなくし、しかもこのように、恐らくは、イスラエルの王子としてきわめてふさわしくないことをした(Ⅱサムエル13:12のタマルのことばを参照)ことに対する自己嫌悪のゆえに、自分のしでかしたことをなきことにしようとばかりに、タマルを自室から追い出しました。それは、タマルという一人の女性を意のままにし、なお責任を取ろうとしなかった、あまりにひどい態度です。このような者はやはり、イスラエルの王位を継ぐ者としてふさわしくなかったのでした。
行き場をなくしたタマルのことは、アブサロムが引き受けました。これは血を分けた兄として果たすべき責任を果たした、ということでしょう。しかし、アブサロムはこんなことをしでかしたアムノンのことを無視しているうちに(22節)、やがてその憎悪がアムノン殺しへと結実しました。ダビデ王家は、大変な家庭の破壊を味わうこととなったのでした。
それはなぜであったか。ダビデはバテ・シェバの夫ウリヤを戦地で殺害させ、ひとつの家庭を破滅に追いやったからでした。そのことはサムエル記第二11章に書かれていますが、忠臣の戦争未亡人を王さまがめとったというこの上ない美談は、実は「主のみこころを損なった」ことであったという評価で、11章は締めくくられています。それがどのような意味を持つかは、続く12章の預言者ナタンとのやり取りのうちに明らかにされ、ダビデは、ナタンの語って聞かせた、貧しい人の子羊を奪った富者の話がまさか自分のことを指しているとも知らずに激怒し、「その男は……子羊を四倍にして償わなければならない」(6節)と、律法(出22:1)を用いて命令を下しましたが、なんということか、この律法によってダビデがさばかれました。ダビデは、ウリヤのいのちを奪った分、4人の子ども(王子)のいのちを失い、そのいのちを失ったひとりがアムノンであったのでした。
もうひとつ、この12章に引きつづき、13章のアムノンの話が出てくるのは象徴的です。姦淫の罪を犯したという父親の罪が子に伝わったということです。ダビデはアムノンのしでかした事態に激怒しましたが(21節)、アムノンのことなど言えた義理ではなかったはずです。王宮にバテ・シェバが召し入れられた経緯に、アムノンはおそらく気づいていたはずで(バテ・シェバの産んだ子どもの重病にダビデはとても悩まされ、王宮もそれに振り回された)、アムノンはダビデの好色に倣ったに過ぎなかったとも言えます。
ともかく、ダビデもアムノンも、取り返しのつかないことをした点では同じです。しかし、ダビデとアムノンには、決定的な違いがありました。ダビデは悔い改めましたが、アムノンには悔い改めた形跡がありません。ダビデはもちろん、その罪の刈り取りを、家庭の破壊、アブサロムのクーデターといった恐るべき懲らしめの形で神さまから科されましたが、最終的には、その歩みが神さまとひとつであったと評価されています(列王記第一15:5)。これはやはり、悔い改めの賜物というべきものでしょう。しかし、これに対してアムノンの死は、ほとんどさばきのような形です。
私たちは、バテ・シェバと通じたダビデの姿や、タマルを辱めたアムノンの姿に、よもや自分はこんなことはあるまい、と思っていないでしょうか? しかし、罪を犯すこと、その結果、時に取り返しのつかないことをしでかしてしまうという点では、私たちも彼らと五十歩百歩です。私たちは悔い改めるチャンスがまだ与えられているうちに、詩篇51篇のごとく、心からの悔い改めを神さまの御前にささげ、イエスさまの十字架のゆえに赦されているという確信のもと、神さまとの関係を築き直してまいりたいものです。
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