牧会コラム週報版　126　2023.2.26

　私は埼玉県のさいたま市中央区が故郷です。今でこそさいたまスーパーアリーナなどを有するさいたま新都心を擁し、政令指定都市の「中央区」らしい面持ちをしていますが、むかしは「与野市」という、市域の南北を挟み込む浦和市と大宮市に比べたら、小さくて何の変哲もない町でした。1985年に埼京線が開通するまで、市内には鉄道の駅も存在しませんでした。

　そのような生い立ちの私は、大学も東京の北区、神学校も周囲に何もない韓国の山あいの地、初の赴任地も仙台東部の田園に隣接する平凡な住宅地、副牧師に就任した教会も東京の足立区、その次に韓国で働いたとき、住まいはソウルの市境からやや外れた場末の町でした。地味なところばかりです。そういう場所が私に似合っているのでしょう。だから、今遣わされている教会が歴史に名高い水戸の市内ではなく、これといった特徴のない茨城町にあるということは、少なくとも私にとってはきわめて気楽にさせてくれる要素ではあります。

　私は海もなく、鉄道もなく、いろいろな観光資源や文化資源を開発することにも腰が重い茨城町を愛します。この町は、東京の足立区・葛飾区・荒川区・台東区・墨田区を合わせたくらい大きな面積なのに、人口は3万人ちょっとで、単純計算してこの5区の人口合わせて180万人に対して人口密度が60分の1、空の広々とした田舎ですが、この町域にも3万人以上もの人が住んでいることを思うと、やはりこれほどたくさんの町民のみなさまにもイエスさまを知っていただかなくてはと思うものです。

　私たちの教会が水戸市域を離れ、茨城町域に礼拝場所を構え、のちには町内に今あるように土地建物まで取得したことには、神さまが私たちの教会をとおして、茨城町の福音化を成し遂げようとされるご計画をお持ちで、そのみこころに私たちがお導きのうちにお従いしたからだと信じます。それまではだれも、これほどの広い町域にキリスト教会を開拓するようには導かれなかったことを考えると、神さまが私たちに託された使命の大きさを思わずにはいられません。

　もっとも、私がこのように考えるのも、自分が茨城町に居住する当事者だからという理由がことさらに大きいからかもしれません。教会員のみなさまはほぼ、町域の外から礼拝堂に来られますが、一般的に見ればお世辞にも魅力あふれると言えない茨城町にいらっしゃるのは、ここに主の愛に満ちた共同体があり、ここで愛し愛される体験を通して、生活の現場に遣わされて主に力強くお従いする、何にも代えがたい喜びに満ちた主の恵みを味わえるからでしょう。私も、うちの教会が存在するゆえに、茨城町は魅力があるとみなさまに言っていただけるような、そんな教会形成を目指してまいりたいと思います。