牧会コラム週報版 198 2024.9.1
「ダビデとヨナタン4」
ダビデは最初、ゴリヤテを倒した勲功、そしてその後戦場であげた数々の戦果のゆえに、サウル王の寵愛を受けました。ところがそれが一変するできごとが起こりました。女性の歌い手たちが「サウルは千を討ち、ダビデは万を討った」と喜び踊ったことに、サウルは激怒したのでした。金持ち喧嘩せず、ではありませんが、余の十倍の戦果を挙げる部下を持てて、余は幸せじゃ、とでもなればよかったものを、小心者のサウルは我慢がならず、ダビデを激戦の中で殺させようとしました。そのためには自分の娘である王女を差し出すこともいといませんでした。しかしダビデはますます戦果を挙げ、王女ミカルに愛され、イスラエルの人望を集める一方で、サウルはますます恐れるしかありませんでした。
ついにサウルはダビデを殺すと公言し、王子ヨナタンの耳に入れます。ヨナタンはダビデを安全なところに逃がしつつ、サウルと対決します。これほどまでにイスラエルの国益をもたらすダビデが、なぜ殺されなければならないのですか……サウルはヨナタンの必死の懇願を聞き、ダビデを殺すことを思いとどまりました。
真の友は、友のためにとりなすことを積極的にします。そのためには友のことを高く評価し、また誇ることもいといません。父サウルからどう思われるかを恐れていては、そういうこともできません。しかし彼はしました。ヨナタンにそれができたのは、歴戦の勇士である自分にさえ挙げられなかったほどの多くの戦果をイスラエルにもたらしたダビデのことを、イスラエル国の王子として、戦士として、そして主にある兄弟として、心から高く評価し、そして愛していたからでした。
讃美歌312番に歌うとおり、イエスさまは私たちにとって、いつくしみ深い友です。友なるイエスさまは、私たちの罪ゆえに怒りを発しておられる御父の御前に、私たちがどんなに素晴らしい存在か、その価値はわたしの血潮が代価として流されるほどのものです、ととりなしてくださいます。もちろん、サウルの怒りは身勝手で、御父の怒りはどこまでも正当であるというあまりに根本的なちがいはありますが、十字架にかかられたイエスさまのお姿は、まさに怒れるサウルの前にダビデのことを必死でとりなす王子ヨナタンのようではいらっしゃらないでしょうか。
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