牧会コラム206「初代教会の総会」

新約聖書の「使徒の働き」は、イエスさまの昇天後、初代教会がどのように形づくられたかを克明に記録した書ですが、その教会形成の過程として見逃せないこととして、「総会の場が持たれた」ということが挙げられます。

　それは使徒の働き15章の1節から29節に記録されていて、ユダヤ人（神の民）の宗教的伝統である「割礼」を異邦人信徒にも受けさせるべきか否かという、一見すると形式的なことのようでいて、信仰の根幹ということにおいて実はとても深刻な問題（参考：ガラテヤ人への手紙ほか）を議論するために集まった会議でした。いろいろな議論があったのちに結論が出て、救いとは神の恵みによるものである、律法的な重荷を（将来的にはわれわれのような東アジアのクリスチャンも含む）異邦人信者に負わせてはならない、という、重大な方針（というより真理）を導き出し、それが教会形成、世界宣教のかけがえのない基準となりました。

　かつてある日米ダブルの宣教師（特に名を秘す）が、「韓国の教会は祈る教会、台湾の教会は賛美する教会、日本の教会は議論する教会」と、日本の教会が「堅い、暗い、つまらない」群れである証拠として批判するのを聞いたことがありますが、この使徒の働き15章の記述のように、総会が、異なる立場の者を御霊の一致に導き、真理に根差した教会形成と世界宣教を生み出す原動力になったという現実を見るならば、そういう議論はまことに聖書的、御心にかなっていると言うべきで、議論というものもあながち悪いばかりのものではない、と考える必要がありましょう。

　本日礼拝後、教会の年次総会が開催されます。私たちが祈りをもってこの総会を持つ以上、そこには聖霊なる神さまがご主権をもって働かれるわけで、そうであるならば、それは使徒の働き15章における教会総会同様に尊重されるべき、重要な会議となります。この話し合いによって、御霊の働きである、キリストのからだなる教会が形づくられる働き、御国がこの地に拡大する働きが推進される以上、そうなのです。総会に祈りをもって臨みましょう。