牧会コラム週報版　197　2024.8.18

「ダビデとヨナタン3」

　戦場に突如登場した少年ダビデは、王としての油注ぎを受けていました。ダビデはまた少年にして、父の羊の群れを守るために、群れに襲いかかるライオンや熊のような猛獣を素手で打ち殺せるような恐るべき力を持っていました。

　イスラエルを愚弄するペリシテの代表戦士なる巨人ゴリアテに怒りを燃やしたダビデは、興味本位で観戦にやってきて、羊を置いてくるとはとんでもない奴だ、となじってくる兄たちにもひるみませんでした。そればかりではありません。ダビデはもともと、竪琴演奏の能力を買われ、サウルの付き人の地位を得ていましたが、その竪琴弾きが果敢にも王に、闘いに行かせてくださいと直訴するのですから、イスラエルの勝利のためなら王をいたずらに恐れることさえもしない、大胆さを備え、また、選ぶべき優先順位を理解している人でもありました。

　サウルはダビデに、自分の武具をつけさせてやりました。しかしダビデは、これでは動けない、闘えないと拒否しました。なんと、王の武具を身につけられるという名誉を単なる虚栄と見なし、イスラエルのほんとうの勝利のために自分が何をすべきか、きちんと理解していたのでした。ダビデはたしかに、自分が王のしもべであるという分際をわきまえていましたが、だからといって王に盲従していたわけではありませんでした。結局、ダビデはきわめて身軽な、羊飼いの格好でゴリアテに向かい、そして勝利しました。

　このダビデを見て、ダビデに心が結びついたようになったひとりの戦士がいました。それが王子ヨナタンでした。この、イスラエルの栄誉のために身ひとつで大巨人に立ち向かい、そして、歴戦の勇士であったはずの自分にさえなしえなかった勝利を得た少年に、ヨナタンは未来のイスラエルの王の姿を垣間見ました。ダビデがこれを契機にサウルに召し抱えられたのを幸い、ヨナタンは王子の特権でダビデに近づき、自分の武具をダビデに渡しました。ダビデよ、君はもう羊飼いのようななりで戦場に赴いてはいけない、僕の最高の武具をあげよう、これで戦ってくれ……ヨナタンの友情が見えてきます。