コラム
変化球聖書人物伝~アムノン
Author
mito
Date
2020-12-20 07:28
Views
4570
※この文章は、2020年11月の月報から転載したものです。
アムノンは、ダビデ家の王子で、サムエル記第二3章2節の記述によればダビデの長子だったので、本来ならばダビデのあとを継いで王になる、王位継承権第一位にある人物でした。しかし彼は、そのような立場にあるまじきことをしでかし、ついには腹違いの弟であるアブサロム王子に殺されました。
サムエル記第二の13章を読みましょう。アムノンはアブサロム同様腹違いの、妹タマルに激しい恋をしました。近親ゆえに禁断の恋です。しかし、この思いを遂げてやろうとした、まるで悪友のような存在の従兄弟のヨナダブにアムノンは悪知恵を吹き込まれ、仮病を使って(しかも事もあろうにダビデ王まで使って)タマルを自室に引き入れ、強引にタマルを辱めました。
このことからわかるのは、アムノンのいだいた恋心は、つまるところ、若い男がいだくゆがんだ肉欲、情欲に過ぎなかった、ということでした。事をやり遂げたアムノンは、それゆえにタマルへの興味をなくし、しかもこのように、恐らくは、イスラエルの王子としてきわめてふさわしくないことをした(Ⅱサムエル13:12のタマルのことばを参照)ことに対する自己嫌悪のゆえに、自分のしでかしたことをなきことにしようとばかりに、タマルを自室から追い出しました。それは、タマルという一人の女性を意のままにし、なお責任を取ろうとしなかった、あまりにひどい態度です。このような者はやはり、イスラエルの王位を継ぐ者としてふさわしくなかったのでした。
行き場をなくしたタマルのことは、アブサロムが引き受けました。これは血を分けた兄として果たすべき責任を果たした、ということでしょう。しかし、アブサロムはこんなことをしでかしたアムノンのことを無視しているうちに(22節)、やがてその憎悪がアムノン殺しへと結実しました。ダビデ王家は、大変な家庭の破壊を味わうこととなったのでした。
それはなぜであったか。ダビデはバテ・シェバの夫ウリヤを戦地で殺害させ、ひとつの家庭を破滅に追いやったからでした。そのことはサムエル記第二11章に書かれていますが、忠臣の戦争未亡人を王さまがめとったというこの上ない美談は、実は「主のみこころを損なった」ことであったという評価で、11章は締めくくられています。それがどのような意味を持つかは、続く12章の預言者ナタンとのやり取りのうちに明らかにされ、ダビデは、ナタンの語って聞かせた、貧しい人の子羊を奪った富者の話がまさか自分のことを指しているとも知らずに激怒し、「その男は……子羊を四倍にして償わなければならない」(6節)と、律法(出22:1)を用いて命令を下しましたが、なんということか、この律法によってダビデがさばかれました。ダビデは、ウリヤのいのちを奪った分、4人の子ども(王子)のいのちを失い、そのいのちを失ったひとりがアムノンであったのでした。
もうひとつ、この12章に引きつづき、13章のアムノンの話が出てくるのは象徴的です。姦淫の罪を犯したという父親の罪が子に伝わったということです。ダビデはアムノンのしでかした事態に激怒しましたが(21節)、アムノンのことなど言えた義理ではなかったはずです。王宮にバテ・シェバが召し入れられた経緯に、アムノンはおそらく気づいていたはずで(バテ・シェバの産んだ子どもの重病にダビデはとても悩まされ、王宮もそれに振り回された)、アムノンはダビデの好色に倣ったに過ぎなかったとも言えます。
ともかく、ダビデもアムノンも、取り返しのつかないことをした点では同じです。しかし、ダビデとアムノンには、決定的な違いがありました。ダビデは悔い改めましたが、アムノンには悔い改めた形跡がありません。ダビデはもちろん、その罪の刈り取りを、家庭の破壊、アブサロムのクーデターといった恐るべき懲らしめの形で神さまから科されましたが、最終的には、その歩みが神さまとひとつであったと評価されています(列王記第一15:5)。これはやはり、悔い改めの賜物というべきものでしょう。しかし、これに対してアムノンの死は、ほとんどさばきのような形です。
私たちは、バテ・シェバと通じたダビデの姿や、タマルを辱めたアムノンの姿に、よもや自分はこんなことはあるまい、と思っていないでしょうか? しかし、罪を犯すこと、その結果、時に取り返しのつかないことをしでかしてしまうという点では、私たちも彼らと五十歩百歩です。私たちは悔い改めるチャンスがまだ与えられているうちに、詩篇51篇のごとく、心からの悔い改めを神さまの御前にささげ、イエスさまの十字架のゆえに赦されているという確信のもと、神さまとの関係を築き直してまいりたいものです。
アムノンは、ダビデ家の王子で、サムエル記第二3章2節の記述によればダビデの長子だったので、本来ならばダビデのあとを継いで王になる、王位継承権第一位にある人物でした。しかし彼は、そのような立場にあるまじきことをしでかし、ついには腹違いの弟であるアブサロム王子に殺されました。
サムエル記第二の13章を読みましょう。アムノンはアブサロム同様腹違いの、妹タマルに激しい恋をしました。近親ゆえに禁断の恋です。しかし、この思いを遂げてやろうとした、まるで悪友のような存在の従兄弟のヨナダブにアムノンは悪知恵を吹き込まれ、仮病を使って(しかも事もあろうにダビデ王まで使って)タマルを自室に引き入れ、強引にタマルを辱めました。
このことからわかるのは、アムノンのいだいた恋心は、つまるところ、若い男がいだくゆがんだ肉欲、情欲に過ぎなかった、ということでした。事をやり遂げたアムノンは、それゆえにタマルへの興味をなくし、しかもこのように、恐らくは、イスラエルの王子としてきわめてふさわしくないことをした(Ⅱサムエル13:12のタマルのことばを参照)ことに対する自己嫌悪のゆえに、自分のしでかしたことをなきことにしようとばかりに、タマルを自室から追い出しました。それは、タマルという一人の女性を意のままにし、なお責任を取ろうとしなかった、あまりにひどい態度です。このような者はやはり、イスラエルの王位を継ぐ者としてふさわしくなかったのでした。
行き場をなくしたタマルのことは、アブサロムが引き受けました。これは血を分けた兄として果たすべき責任を果たした、ということでしょう。しかし、アブサロムはこんなことをしでかしたアムノンのことを無視しているうちに(22節)、やがてその憎悪がアムノン殺しへと結実しました。ダビデ王家は、大変な家庭の破壊を味わうこととなったのでした。
それはなぜであったか。ダビデはバテ・シェバの夫ウリヤを戦地で殺害させ、ひとつの家庭を破滅に追いやったからでした。そのことはサムエル記第二11章に書かれていますが、忠臣の戦争未亡人を王さまがめとったというこの上ない美談は、実は「主のみこころを損なった」ことであったという評価で、11章は締めくくられています。それがどのような意味を持つかは、続く12章の預言者ナタンとのやり取りのうちに明らかにされ、ダビデは、ナタンの語って聞かせた、貧しい人の子羊を奪った富者の話がまさか自分のことを指しているとも知らずに激怒し、「その男は……子羊を四倍にして償わなければならない」(6節)と、律法(出22:1)を用いて命令を下しましたが、なんということか、この律法によってダビデがさばかれました。ダビデは、ウリヤのいのちを奪った分、4人の子ども(王子)のいのちを失い、そのいのちを失ったひとりがアムノンであったのでした。
もうひとつ、この12章に引きつづき、13章のアムノンの話が出てくるのは象徴的です。姦淫の罪を犯したという父親の罪が子に伝わったということです。ダビデはアムノンのしでかした事態に激怒しましたが(21節)、アムノンのことなど言えた義理ではなかったはずです。王宮にバテ・シェバが召し入れられた経緯に、アムノンはおそらく気づいていたはずで(バテ・シェバの産んだ子どもの重病にダビデはとても悩まされ、王宮もそれに振り回された)、アムノンはダビデの好色に倣ったに過ぎなかったとも言えます。
ともかく、ダビデもアムノンも、取り返しのつかないことをした点では同じです。しかし、ダビデとアムノンには、決定的な違いがありました。ダビデは悔い改めましたが、アムノンには悔い改めた形跡がありません。ダビデはもちろん、その罪の刈り取りを、家庭の破壊、アブサロムのクーデターといった恐るべき懲らしめの形で神さまから科されましたが、最終的には、その歩みが神さまとひとつであったと評価されています(列王記第一15:5)。これはやはり、悔い改めの賜物というべきものでしょう。しかし、これに対してアムノンの死は、ほとんどさばきのような形です。
私たちは、バテ・シェバと通じたダビデの姿や、タマルを辱めたアムノンの姿に、よもや自分はこんなことはあるまい、と思っていないでしょうか? しかし、罪を犯すこと、その結果、時に取り返しのつかないことをしでかしてしまうという点では、私たちも彼らと五十歩百歩です。私たちは悔い改めるチャンスがまだ与えられているうちに、詩篇51篇のごとく、心からの悔い改めを神さまの御前にささげ、イエスさまの十字架のゆえに赦されているという確信のもと、神さまとの関係を築き直してまいりたいものです。
Total 326
| Number | Title | Author | Date | Votes | Views |
| 86 |
牧会コラム月報版 2021年12月
mito
|
2021.12.28
|
Votes 0
|
Views 3082
|
mito | 2021.12.28 | 0 | 3082 |
| 85 |
牧会コラム週報版 073 2021.12.26
mito
|
2021.12.28
|
Votes 0
|
Views 3095
|
mito | 2021.12.28 | 0 | 3095 |
| 84 |
牧会コラム週報版 072 2021.12.12
mito
|
2021.12.28
|
Votes 0
|
Views 3093
|
mito | 2021.12.28 | 0 | 3093 |
| 83 |
牧会コラム週報版 071 2021.11.28
mito
|
2021.12.28
|
Votes 0
|
Views 3099
|
mito | 2021.12.28 | 0 | 3099 |
| 82 |
牧会コラム週報版 070 2021.11.21
mito
|
2021.11.27
|
Votes 0
|
Views 3138
|
mito | 2021.11.27 | 0 | 3138 |
| 81 |
牧会コラム週報版 069 2021.11.14
mito
|
2021.11.27
|
Votes 0
|
Views 3048
|
mito | 2021.11.27 | 0 | 3048 |
| 80 |
牧会コラム週報版 068 2021.11.7
mito
|
2021.11.27
|
Votes 0
|
Views 3264
|
mito | 2021.11.27 | 0 | 3264 |
| 79 |
牧会コラム月報版 2021年11月
mito
|
2021.11.27
|
Votes 0
|
Views 2917
|
mito | 2021.11.27 | 0 | 2917 |
| 78 |
牧会コラム週報版 067 2021.10.31
mito
|
2021.11.05
|
Votes 0
|
Views 3404
|
mito | 2021.11.05 | 0 | 3404 |
| 77 |
牧会コラム週報版 066 2021.10.24
mito
|
2021.11.05
|
Votes 0
|
Views 3123
|
mito | 2021.11.05 | 0 | 3123 |
| 76 |
牧会コラム週報版 065 2021.10.17
mito
|
2021.11.05
|
Votes 0
|
Views 3000
|
mito | 2021.11.05 | 0 | 3000 |
| 75 |
牧会コラム週報版 064 2021.10.10
mito
|
2021.11.05
|
Votes 0
|
Views 2900
|
mito | 2021.11.05 | 0 | 2900 |
| 74 |
牧会コラム週報版 063 2021.10.3
mito
|
2021.11.05
|
Votes 0
|
Views 3001
|
mito | 2021.11.05 | 0 | 3001 |
| 73 |
牧会コラム週報版 062 2021.9.26
mito
|
2021.10.02
|
Votes 1
|
Views 2909
|
mito | 2021.10.02 | 1 | 2909 |
| 72 |
牧会コラム月報版 2021年10月
mito
|
2021.10.02
|
Votes 0
|
Views 3183
|
mito | 2021.10.02 | 0 | 3183 |
| 71 |
牧会コラム週報版 061 2021.9.19
mito
|
2021.09.20
|
Votes 1
|
Views 3050
|
mito | 2021.09.20 | 1 | 3050 |
| 70 |
牧会コラム週報版 060 2021.9.12
mito
|
2021.09.11
|
Votes 0
|
Views 3005
|
mito | 2021.09.11 | 0 | 3005 |
| 69 |
牧会コラム週報版 059 2021.9.5
mito
|
2021.09.11
|
Votes 0
|
Views 3608
|
mito | 2021.09.11 | 0 | 3608 |
| 68 |
新コラム・ザ・ゴスペル 2021年9月
mito
|
2021.08.29
|
Votes 2
|
Views 3253
|
mito | 2021.08.29 | 2 | 3253 |
| 67 |
変化球聖書人物伝~アマレク人の某兵士
mito
|
2021.06.07
|
Votes 0
|
Views 3980
|
mito | 2021.06.07 | 0 | 3980 |
| 66 |
新コラム・ザ・ゴスペル 2021年5月
mito
|
2021.05.01
|
Votes 0
|
Views 3937
|
mito | 2021.05.01 | 0 | 3937 |
| 65 |
新コラム・ザ・ゴスペル 2021年4月
mito
|
2021.03.28
|
Votes 0
|
Views 4114
|
mito | 2021.03.28 | 0 | 4114 |
| 64 |
新コラム・ザ・ゴスペル 2021年3月
mito
|
2021.02.25
|
Votes 0
|
Views 3907
|
mito | 2021.02.25 | 0 | 3907 |
| 63 |
コラム・ザ・ゴスペル058 2021.1.31
mito
|
2021.02.07
|
Votes 0
|
Views 3917
|
mito | 2021.02.07 | 0 | 3917 |
| 62 |
コラム・ザ・ゴスペル057 2021.1.24
mito
|
2021.01.30
|
Votes 0
|
Views 3876
|
mito | 2021.01.30 | 0 | 3876 |
| 61 |
コラム・ザ・ゴスペル056 2021.1.17
mito
|
2021.01.21
|
Votes 0
|
Views 3945
|
mito | 2021.01.21 | 0 | 3945 |
| 60 |
コラム・ザ・ゴスペル055 2021.1.10
mito
|
2021.01.12
|
Votes 0
|
Views 4331
|
mito | 2021.01.12 | 0 | 4331 |
| 59 |
コラム・ザ・ゴスペル054 2021.1.3
mito
|
2021.01.03
|
Votes 0
|
Views 4428
|
mito | 2021.01.03 | 0 | 4428 |
| 58 |
コラム・ザ・ゴスペル053 2021.1.1
mito
|
2021.01.03
|
Votes 0
|
Views 4289
|
mito | 2021.01.03 | 0 | 4289 |
| 57 |
コラム・ザ・ゴスペル052 2020.12.27
mito
|
2020.12.27
|
Votes 1
|
Views 4337
|
mito | 2020.12.27 | 1 | 4337 |
| 56 |
変化球聖書人物伝~アドニヤ
mito
|
2020.12.27
|
Votes 0
|
Views 4852
|
mito | 2020.12.27 | 0 | 4852 |
| 55 |
変化球聖書人物伝~メフィボシェテ
mito
|
2020.12.20
|
Votes 0
|
Views 5120
|
mito | 2020.12.20 | 0 | 5120 |
| 54 |
変化球聖書人物伝~アムノン
mito
|
2020.12.20
|
Votes 0
|
Views 4570
|
mito | 2020.12.20 | 0 | 4570 |
| 53 |
変化球聖書人物伝~ヨアブ
mito
|
2020.12.20
|
Votes 0
|
Views 4324
|
mito | 2020.12.20 | 0 | 4324 |
| 52 |
コラム・ザ・ゴスペル051 2020.12.20
mito
|
2020.12.20
|
Votes 0
|
Views 4082
|
mito | 2020.12.20 | 0 | 4082 |
| 51 |
コラム・ザ・ゴスペル050 2020.12.13
mito
|
2020.12.13
|
Votes 0
|
Views 4143
|
mito | 2020.12.13 | 0 | 4143 |
| 50 |
コラム・ザ・ゴスペル049 2020.12.6
mito
|
2020.12.05
|
Votes 0
|
Views 4140
|
mito | 2020.12.05 | 0 | 4140 |
| 49 |
コラム・ザ・ゴスペル048 2020.11.29
mito
|
2020.12.01
|
Votes 0
|
Views 4156
|
mito | 2020.12.01 | 0 | 4156 |
| 48 |
コラム・ザ・ゴスペル047 2020.11.22
mito
|
2020.11.22
|
Votes 0
|
Views 4521
|
mito | 2020.11.22 | 0 | 4521 |
| 47 |
コラム・ザ・ゴスペル046 2020.11.15
mito
|
2020.11.15
|
Votes 1
|
Views 4217
|
mito | 2020.11.15 | 1 | 4217 |
