牧会コラム236「創世記のヤコブ6」

ヤコブはラバンのもとに身を寄せるにあたり、働いてもらうのにただ働きでは悪いから、何か欲しいものはないかね、と持ち掛けられます。ヤコブの願ったことはただひとつ、ラバンの娘の美しいラケルと結婚することでした。ラバンはそれを受け入れ、7年契約でヤコブを働かせます。

　そして念願かなって、ヤコブは結婚し、初夜を迎えます。だが、朝になって彼女の顔を見ると、なんとそれはラケルの姉のレアでした。29章17節の表現から類推するに、レアはラケルに比べ、女性としての容貌においてかなり見劣りしていたことが考えられます。ヤコブはラバンに抗議しますが、ラバンは、まずは1週間、レアとの新婚の期間を過ごした後にラケルを妻として与えることを条件に、ヤコブとの間に、さらに7年の労働契約を結ばせます。ヤコブはラケルとの愛に支えられ、さらに7年働くことにしました（29章30節）。しかし、有能なヤコブをただ同然で働かせようというわけですから、ラバンはヤコブよりも一枚も二枚も上手でした。

　このときヤコブは、神の祝福をかなり卑劣な方法で手に入れたわが身を、省みることになったのではないでしょうか。ラバンにしてみれば、親元にいられなくなった親戚が、しかも適齢期の娘と結婚して身内となるのだから、働いてもらって当然だ、となるでしょう。ヤコブの個人的な感情など知ったことではありません。しかし、もとはといえばヤコブが、兄エサウが自分に対してもともと複雑な感情を抱いていたこと（27章36節）を考えもせずに、ただ母親にそそのかされるがままに祝福をわがものとしてしまったことが、今の理不尽な苦労を招いてしまったともいえるわけです。

　しかし、これが神の人の歩みというものです。みこころにかなう人になるにあたり、それにふさわしくない言動をすることで、苦労することもあります。それは罪という点では悔い改めれば神さまに赦されますが、人の前では責任を果たす厳しい歩みを続けることもあるものです。しかし、その歩みは私たちを滅ぼすためのものではなく、むしろ神に拠り頼ませることで、私たちを立て上げるものです。