牧会コラム220「信仰者の燃え尽き4」

「マルチタスク」ということばが使われるようになって久しいですが、現代は何らかの仕事をしながらも、同時にスマートフォンを通じてＳＮＳに接続した状態になっていて、それなりに料金がかかるため通信することに一定のためらいがあった携帯電話（スマホ以前）の時代よりも、より多くの情報を処理することへのハードルが下がっています。しかしそれは、こちらの事情などお構いなしに大小の課題をこなさせる相手の要求に、常時さらされているということであり、意識するにせよしないにせよ、精神的にものすごい労力を消費していることになります。

　私が危惧するのは、そういう現代人にとって、聖書通読やＱＴの時間までもが、情報過多からくるストレス蓄積に拍車をかけるものになってはいないか、ということです。疲れて、細かい字で書かれた聖書など読む気が起こりにくい、でも読まないでいるとなんだか後ろめたい、それでますます気疲れしてしまう……。本来ならば、そういう疲労から救ってくださるべく、主が聖書のみことばを通じて語り、癒やしてくださるものなのですが、何ということ、聖書を読もうにも読めないわけです。なんだか、疲労が極限に達し、極度の食欲不振に陥ったり、消化器系にいちじるしい障害が生じたりして、食事で栄養も取れなくなっているかのようではないでしょうか。

　私もこれまで、聖書通読を毎年のように奨励しながらも、正直、みなさまがそこまで聖書通読というものに積極的に反応していらっしゃらないと感じることが往々にしてありました。しかし、ヘブル人への手紙には、あなたがたは堅い食物がまだ食べられる状態ではない、と筆者が苦言を呈するくだりがありますが、「霊的な胃腸」が弱っていては、堅いものを食べるのがよいこととわかっていても、食べて消化して栄養にすることができません。こんにちの情報過多社会は、おそらくみなさまの「霊的な胃腸」を過度の情報やストレスで相当に病ませ、弱らせていると思います。こうなっては、誤解を恐れず申し上げれば、燃えつきを予防するためにみことばを読むということが、下手をすると無駄な努力になりかねません。次回は、そうならないためのひとつの提案をいたします。