牧会コラム210「聖書に学ぶ結婚その4」

　「私が願うのは、すべての人が私のように独身であることです。しかし、一人ひとり神から与えられた自分の賜物があるので、人それぞれの生き方があります。……自制することができないなら、結婚しなさい。欲情に燃えるより、結婚するほうがよいからです。」（Ⅰコリ7：7, 9）

　7節のみことばを読んだだけでは、まるで結婚することがよくないことであるかのような印象を受けるかもしれません。パウロの願いどおりでないということは、すなわち、結婚するとはみこころに反する決断をすることなのだろうか、と。

　しかし、神さまは人を、だれもが独身に歩むようにおつくりになりませんでした。というのは、たいてい、人には「性欲」が備わっているからです。その「性欲」は、この手紙の受け取り手であったコリントの人たちなど特にそうだったはずですが、きわめて不健全な形で用いられかねず、その動機となる悪い感情が発露することを、このみことばでは「欲情に燃える」と表現しています。そうなるくらいならば、特定のだれか異性の信徒と結婚すべきである、というわけです。

　パウロは、人の生き死にさえ左右するエルサレムの議会において議決権を持つ、議員の立場にあった者で（使26：10）、そのような立場を持つには、結婚していることが必須の条件でした。しかしパウロはこの手紙を書いた時点では、独身でした。おそらく、パウロのことをガマリエル門下のエリート律法学者と見込んで結婚した夫人が、イエスの道を行く者となったパウロに見切りをつけたものと推測されますが、そのようにして独身となったパウロは、独身という身分が、実は主の働きをするにあたって（特に教会が格別の困難に置かれていたこの時代にあって）きわめて有用であることを体験していたわけです。ゆえに、結婚することを特段必要としない信徒ならば、独身で生きることを勧めるのももっともなことです。しかし、その道を妨げるものとして、たいてい人は、多くの場合こじらせて「欲情」と化す性欲を持っているわけであり、そういう消極面からも、クリスチャンに結婚は必要というわけです。